声届く限り
2007 / 05 / 31 ( Thu )
じぃちゃんが死んだ。
最期の時を看取る事が出来たんだけど、正直さ、じぃちゃん最期なに言ってたのかわかんなかった。
それが僕にとって一番悲しかった。
じぃちゃんが死んだ事より、そっちの方が悲しかった。





じぃちゃんは歌うのが大好きで、よくカラオケなんか行ってたんだ。
一緒にカラオケ行ってさ、一緒に歌ったりなんかしたよ。
でもね、じぃちゃんとカラオケに行くようになったのは、つい最近だった。
それまで僕はじぃちゃんが歌が好きって事すら知らなかったんだけど。
ある日、僕が忘れ物してダッシュで帰ってきたんだ。
そしたらじぃちゃんが仏間で何かを歌ってた。
急いでたんだけど何か気になってさ。
初めてじぃちゃんは歌が好きって知った時だった。






じぃちゃんの選曲は結構幅広くてね。
オレンジレンジとかも歌えてさ、一緒に歌ったりしたよ。
でスッゴイ元気なんだよ。
それがさ嬉しくて、なんだか誇らしかったんだ。
だってこんなに元気なじぃちゃんってそこらに居ないでしょ。
だから自慢だったんだよね。
どこで歌覚えたの?って聞いたら。
テレビで見て覚えたんだって。
じぃちゃんやるなぁなんて。






次第にじぃちゃんは外に出なくなって、歩かなくなって、入院した。
もうその時点で悲しかったんだ。
あんなに元気で誇らしかったじぃちゃんが寝込んでる。
勝手な話なんだけどさ。
悲しくて、寂しかった。
自慢だったじぃちゃんとカラオケ行けなくなったんだから。
一日中寝てる日なんてざらになってきて、いよいよなんだろうか、なんて不謹慎にも思ってしまう。






そんな日が続いて、今日が最期の日だった。
なんとなくわかったんだ。
でも信じたくなくて、必死で否定してたのに。
最期の最期にじぃちゃんは目を覚まして、小さな声で何かを呟いた。
よくわかんなかったんだ。
スゴイ弱々しくて、震えてて、かすれた声。
出来る事なら喋らないで欲しかったとも思う。
このまままた元気になって、カラオケでも行くぞ!なんて言ってくれるって思ったよ。
やっぱり僕の望んだ奇跡は起こらなかった。
結局、じぃちゃんは何を言ってたのかわからずに、何かを呟きながら目を閉じた。
それがじぃちゃんの最期。

僕の誇りで、自慢で、大好きだったじぃちゃんの最期。
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