在り来たりな嘘
2007 / 02 / 06 ( Tue )
最低だよ。

在りもしない、私の普段の生活。

ただ彼に振り向いてほしい。

そんな欲が、私の口から出た最低な言葉。







好きな人がいて、仕事が終わって一緒に帰ることがある。
彼は疲れてるだろうけど、そんな素振りは一切見せない。
私には完璧な人に見えるんだ。
だから私もつい調子に乗って喋ってばっかりで、彼はそんな私の話を聞いてくれる。
でも私の口から発せられる言葉はほとんどが嘘。
ただ彼に嫉妬してほしいと思って。
付き合ってるわけじゃない。
彼にとって私は身近な存在じゃないのはわかってる。
でも、彼がたまに言う一言が欲しくて、いろんな嘘をついた。

「俺には手も届きそうもないなぁ」

そんなことはない。
むしろ私の方がかなわないんだから。








墓穴を掘るとはこの事なのだろう。
今日もまた私は嘘をついた。
でも後になって気づいたんだ。
矛盾したことを言ってたって。
彼はたぶん気づいただろう。
バレるのが恐くて、後に退けなくなった。
矛盾にまた嘘を重ね、塗り潰し、曖昧にしていく。
そんな作業をしてる汚さに、ただただ申し訳なく、独りで泣いていた。









それから私は彼と一緒に帰ることを避けるようなった。
彼に合わせる顔が見つからない。
どんな話をしてももうあの一言は出てこないだろうと。
段々彼を忘れようとしている。
彼に会っても気づかないフリ。
汚く惨めで、悲しい私に嫌気がさす。









彼からの1通のメール。

「最近どんな感じ?やっぱり引っ張りダコ?」

私は全部嘘でしたって。
全部吐き出して、楽になろうとメールを書き始めた。
全部書き終えて、読み返せば段々恐くなって、結局全部消してしまう。

「最近は落ち着いたかな」

そんな性懲りも無い嘘を重ねた。









スグにメールは帰ってきた。
覚悟を決めて話があるから来てほしいと彼を呼び出した。
呼び出した場所に行くと彼は先に一人でベンチに座ってる。
でも恐くて、このままバレる前に逃げようとも考えた。
そうこうしてるうちに彼に見つかって、私は彼と少し距離を置いて隣に座る。
また彼とこうして横に並んで話せるなんて思ってもなかった。
黙ってると彼は言う。

「今日はあまり喋らないね」

喋れるはずがない。
すぐにバレるだろうから。
でも私はこれ以上、嘘をつきたくなかった。
彼に嘘をつきたくなかった。
だから全部ココで吐き出そうと決心したんだ。

「実は全部嘘だったんだ。私が引っ張りダコなわけないよ」

もう終わったって覚悟してた。
少しの間、時間が止まったように風も止まって、私の心臓の音が聞こえるような静けさが空間を埋め尽くした。

「知ってたよ。いつも電車のガラスごしに君を見てた。君が君自身の話をするときは決まって目が脅えてたんだ」

え?

「そうやって本当の事を言ってくれた。確かに嘘だったかもしれない。でも今君は嘘をついてないだろう?わかるんだ、君のその目が教えてくれてる」

ジッと彼は私の目を見て話してくれてた。
今まで私は嘘をついてきた。
その紛れも無い真実が今になって胸から飛び出てきたような。
自然と涙が溢れて私は泣き崩れた。








今では彼と普通に話ができる。嘘じゃなくて本当の私として。
本当の私を見てもらいたいから。
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